街で出会った天使

 

 

 

2002年夏。

 

ロンドンの美術大学に入学許可を得て渡英し、

 

サウスロンドンの学生寮に入った。

 

 

 

同じ寮で出会った韓国からの留学生に、

 

毎週、ポートベローマーケットに出店していると聞く。

 

「来週は自分は行けないから、代わりに場所を使っていいよ」

 

 

 

雑貨屋さん、それとも本屋さんだったか。

 

お店の前の路上を使わせてもらっているという。

 

ロンドンはなんて芸術に温かい街なんだろう。

 

 

 

次の週。晴天だった。

 

お店の前の路上に、硯、筆、墨、Tシャツをひろげた。

 

 

 

Tシャツにライブペイントをしていると、

 

通りすがりの人が声をかけてくれる。

 

 

 

5歳くらいのかわいいロンドン子が興味津々に近づいてきた。

 

「一緒に描く?」

 

少女も一緒に墨絵を描いた。

 

 

 

向こうから、その子のパパがやってきた。

 

「僕の奥さんが近くでセレクトショップをしているから、

 

あとで、君の作品をもってきたら?」

 

 

 

次の週、そのお店の店内でライブペイントをしていたら

 

日本から来たバイヤーさんと出会った。

 

 

 

こうして、ブランドをはじめることになった。

 

魔女

 

 

 

大学生のとき、絵本作家になりたかった。

 

 

 

絵本の編集者のかたから真っ白の束見本をいただき、

 

そこに絵を描いては、見ていただいていた。

 

 

 

あるときなぜだか、

 

走る馬のしっぽをつかんでいる

 

赤いワンピースを着た女の子の絵が浮かんできて、

 

まだ真っ白のままの絵本の、一番最後のページに描いた。

 

 

 

それから、絵本をつくったけれど、そこには馬は登場しなかった。

 

 

 

絵本のストーリーはこんな感じだった。

 

赤い女の子は、風船を持ってふわりと浮かび上がり、空を旅して

 

それから一軒の家の壁と屋根を息で吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

ロンドンでブランドを始めて、やがて帰国してから

 

馬と女の子の絵を、ブランドのネームタグにした。

 

 

 

 

 

それから、3年ぐらい後だと思う。

 

ロンドン留学時代のお友達と、京都の英国風パブにいた。

 

その子のお友達の、スコットランド人の演奏家のライブだった。

 

 

 

そのかたの奥様に、作品集を見てもらった。

 

馬と女の子の絵をみたとき

 

「それじゃあなた、あのお話を知っているのね?」

 

といわれた。

 

 

 

なんのことだろう

 

 

 

後日、奥様から、資料が届いた。

 

スコットランド人の有名な詩人の長編詩に、

 

あの絵と同じ場面があった。

 

女の子は若い魔女だった。

 

 

 

時空を超えて、あのイメージが、私の頭の中に降りてきたのだったか。

 

何年も経て、自分が何を描いたのか、謎が解けるとは。

 

竹染め DYEING WITH BAMBOO   MAY 11-13 2012